このたび遠藤木型では、すでに活躍しているキーエンスの3次元測定器に加え、11月にはコムネットのレーザー加工機を新たに導入することになりました。
今の時代、Amazonなどのネット通販を開けば、3Dスキャナーやレーザー加工機が数多く販売されています。価格は大手メーカーの数分の一。安い選択肢がたくさんある中で、なぜ私たちがキーエンスやコムネットといった高価な一流メーカーを選ぶのか。今回は、私たちの設備選定の理由と、ものづくりに対する想いをお話ししたいと思います。
1. 1台しかない設備だからこそ、「サポート体制」が命になる
ネット通販等で安価な機械が買える時代であっても、私たちが設備を選ぶ最大の基準は「トラブルが起きたとき、どれだけ手厚く迅速なサポートをしてくれるか」です。
実は、以前使っていたレーザー加工機は、正直なところサポート体制があまり良いものではありませんでした。 弊社において、レーザー加工機は「社内に1台しかない」設備です。もしこれが壊れたらどうなるか――そう考えると、トラブルが怖くてお客様に対して積極的にレーザー加工の営業やアピールができないという、悔しい悩みを長年抱えていました。
決定打となったのはコロナ禍の出来事です。当時は世界的な半導体不足やコンテナ不足で「新しい機械を頼んでも届くのは1年先」「部品の基板が入荷しない」といった厳しい話が製造業全体で飛び交っていました。そんな時期にレーザー加工機の調子が悪くなり問い合わせたところ、返ってきたのは「部品調達に数ヶ月かかる可能性がある」という返答でした。途方に暮れたのを覚えています。(実際3週間できました)
仕事には厳格な納期があります。お客様にご相談して納品を遅らせてもらえたとしても、現実的には1週間程度が限界です。数ヶ月も機械が止まってしまうというのは、プロの仕事として「死」を意味します。
今回導入を決めたコムネットは、部品を国内に常時在庫しているため、万が一トラブルがあっても数日で部品が届くとのことです。本体が高価であっても、サポート体制がしっかりしていれば、トラブル発生時のロスは「数日程度」で確実に収まります。この安心感があって初めて、私たちも積極的にお客様へ営業ができるのです。

2. 実体験で感じたキーエンスの神対応
サポート体制の重要性は、すでに社内にあるキーエンスの3次元測定器でも痛感しています。
ある時、現場で作業中にうっかり測定器を落として壊してしまったことがありました。青ざめてすぐに連絡したところ、キーエンスはすぐに代わりの代替機を手配して発送してくださり、現場の作業ロスは実質ゼロで済みました。
さらに、機械の操作や機能で分からないことがあれば、専門のスタッフが直接会社まで説明に来て丁寧に教えてくれます。単に「モノを売って終わり」ではなく、現場が困らない体制を整えてくれる手厚さには、本当に助けられています。
3. NC加工機と「1台もの」の設備の違い
もちろん、安価な機械を否定するつもりはありません。
弊社の場合、NC加工機であれば社内に数台保有しているため、もし1台が故障で止まったとしても他の機械でカバーすることができます。もし「安価な機械を複数台購入し、それを並べておけるだけの広いスペースと予算」がある企業であれば、ネット通販等で揃えるのも一つの賢い方法だと思います。
しかし、レーザー加工機や高精度な測定器のように、何台も置くことができない「社内に1台きり」の設備においては、機械の価格以上に「絶対に業務を止めないサポート体制」が最優先事項になるのです。
4. メーカーのブランド力=企業の「営業力」と「信頼」
もう一つ大切なのは、メーカーの持つブランド力です。
お客様(依頼する側)の立場になって考えてみてください。
- Amazonで購入した格安の測定器で検査している会社
- キーエンスの測定器で厳密に品質管理をしている会社
もし大切な仕事を頼むとしたら、どちらの会社にお願いしたいでしょうか。 多少見積もりの価格が高かったとしても、信頼できる一流メーカーの機器で品質保証をしている会社にお願いしたくなるのが自然な感覚だと思います。高品質な業務用機器を導入していること自体が、そのまま自社の「信頼」や「営業力」に直結するのです。
5. 寿命・精度、そして捨てる時の「罪悪感」
機械の寿命と精度の問題も避けては通れません。 さすがに「安くて、10年以上壊れず、初期の精度も変わらない」という都合の良い機械は存在しないと思います。
ものづくりに携わる人間として、「壊れてはいないけれど、精度が狂って使えなくなった機械」を処分するのは、本当に気が引ける(心が痛む)ものです。高価であっても長く高精度を維持し続けてくれる設備を選ぶことの方が、結果的にトータルコストも安く、何より気持ちよく仕事ができます。

6. ネット通販機の魅力と、プロが見抜く「スペックの現実」
最近、レーザー加工機の購入にあたって様々な機種を詳しく調べていました。
使ったことはありませんが、ネット通販などで見かける小型レーザー加工機は、機能の進化スピードが早くとても魅力的に映ります。「業務用メーカーももう少し頑張って進化してほしいな」と思う部分があるのも本音です。
しかし、普段からレーザー加工機を動かしているプロの目線で見ると、カタログスペックには「実際の現場で使えるかどうかのギャップ」があることに気づきます。
- 「CO2レーザー30Wで厚い材料も切断可能」という表記 嘘や大袈裟とまでは言わなくても、プロの感覚からすると「確かに切れるかもしれないけれど、お客様に納品する『商品』レベルの切断面クオリティにはならない」のが実情です。通常5mm前後が良いところかなと思います。
- 「速度は速いが、出力が低い」 パワーが足りなければ結局速度を極端に落とすか、何度も往復させることになり、速さの意味がありません。
- 「最高速度は速いが、加速度が遅い」 直線でしかスピードが出ず、木型のような細かなカーブや複雑な形状では、最高速度に達する前に減速してしまうため、実際の加工速度は全く上がりません。
- 「丈夫さと重さ(フレーム剛性)のリアル」 「丈夫さ=重さ」とは一概に言えませんが、長年高精度を保つ頑丈な機械は必然的に重くなります。安価な製品に「軽くて頑丈な最高級素材(チタンや高スペックカーボン等)」が使われるはずがありません。軽すぎる機械はフレームの剛性が不足しており、高速運動時の振動で精度が狂ったり耐久性に問題が
- 「レーザー出力の経年劣化と発振器の寿命」 レーザー加工機は、使っていくうちにどうしても出力が落ちてきます。特に安価な製品に多い「ガラス管レーザー」は寿命が短く、購入当初は「5mmの材料が綺麗に切り抜けた」としても、2〜3年経つと出力低下で同じ5mmすら切れなくなってしまうケースが多々あります。商品として長期間同じ品質を提供し続けるためには、発振器の耐久性や安定性が見逃せないポイントになります。でも業務用に比べたら部品交換代は安いと思います。
「切断できること」と「プロの仕事として使える品質・スピードで仕上がること」は全く別物です。購入を検討される方は、カタログの最高数値だけでなく、出力とのバランスや加速度、そして実際の仕上がり品質をしっかり確認することをおすすめします。

7. 私たち自身も「手厚いサポート体制を持つ木型屋」でありたい
私たちが手厚いサポート体制を持つメーカーから設備を購入する最大の理由は、単に自分たちが助かるからだけではありません。「自分たち自身も、お客様にとって手厚いサポート体制を持つ木型屋でありたい」と強く思っているからです。
木型をお納めしたあと、お客様の現場で万が一トラブルや急な仕様変更があったとき、私たちが「対応に数ヶ月かかります」と言ってしまえば、お客様の製造ラインを止めてしまいます。
設備トラブルのリスクを限りなくゼロに抑え、何かあっても迅速に対応できる環境を整えておく。それこそが、お客様に安心をお届けするための私たちの責任です。私たちがキーエンスやコムネットに助けられたように、「遠藤木型に頼んでおけば、トラブルがあってもすぐ対応してくれるから安心だ」と言っていただける木型屋であり続けたいと考えています。
8. お互いの付加価値を認め合う世の中へ
私たちが製造している木型も、決して「安さ」だけを売りにした製品ではありません。手間と高い技術を惜しみなく注ぎ込んでいるからこそ、自信を持って製品をお届けしています。
自分たちの技術や付加価値をお客様に正当に認めていただくためには、まず私たちが、取引先や設備メーカーの持つ素晴らしい価値を正当に認め、良い物を選んでいく姿勢が必要不可欠です。
安さだけを追い求めるのではなく、お互いが誇りを持っている「価値」を正当に評価し、良いものを購入し合う――世の中全体がそんな循環になっていけば、日本のものづくりはもっと豊かで強くなっていくと信じています。
今回導入するキーエンスの3次元測定器、そして11月に届くコムネットのレーザー加工機。これらは単なる設備の購入ではなく、遠藤木型がお施主様・お客様へ提供する「絶対的な信頼」と「迅速なサポート」への投資です。
これからも万全の設備と体制で、最高の品質をお届けしてまいります。

